写真提供:Modern Cinema Production Co

Blackmagic Designの発表によると、金馬奨受賞作品「アリフ、ザ・プリン(セ)ス」は、URSA Mini 4.6Kデジタルフィルムカメラで撮影され、カラリストのチャン・ゾーイ氏により、DaVinci Resolve StudioおよびDaVinci Resolve Advanced Panelを使ってグレーディングされたという。

ワン・ユーリン監督、ワン・パンユン撮影監督による「アリフ、ザ・プリン(セ)ス」は、女性になりたいという願いと、原住民族の族長の後継者という立場の間で板挟みになっている25歳の美容師のアリフと彼を取り巻く友人たちのストーリー。ウジョンオン・ジャイファリドゥ、チャオ・イーラン、ウー・ポンホン、チェン・ジューションらが出演している。同作は、2017年の金馬奨で、最優秀助演男優賞を受賞し、最優秀作品賞にノミネートされた。また、第30回東京国際映画祭では、「アジアの未来」に選出された。

プロジェクト全体の予算が25万USドルという厳しい条件の中、ワン・ユーリン監督は、低価格でもハイエンドの映像を撮影できるデジタルフィルムカメラを必要としていた。Blackmagic Production Camera 4KとBlackmagic Cinema Cameraを長年に渡って使用してきたワン監督は、Blackmagic Designカメラの画質を信頼していたので、今回の作品ではURSA Mini 4.6Kカメラを使用することを決めたという。

ワン・パンユン撮影監督は次のようにコメントしている。

ワン氏:低価格でパワフルな機能を搭載していることに加え、URSA Mini 4.6Kはサイズも完璧でした。肩乗せで撮影しても重くありません。さらに屋内のシーンは、台北市内の古い建物やバーなど、狭い場所で撮影することが多かったのですが、カメラを簡単に持ち運びできました。俳優の動きを追ったり、バーの狭いトイレやカウンターなどでのセットアップも簡単でしたね。

コストを抑えるために、できる限り照明は使わずに、自然光を光源として撮影を進めた。自然光では暗すぎる場合にだけ、人工照明を使用したという。夜のシーンの撮影では、特定のエリアだけを照らした。その結果、多くのフッテージは非常に暗い仕上がりになった。

写真提供:Modern Cinema Production Co

カラリストのチャン・ゾーイ氏にとって、この暗い映像は大きな課題となった。チャン氏はこれまでに、人気映画「Monkey King 3:Kingdom of Women」、「Devil and Angel」、「閃光少女」、「 Black & White 2:The Dawn of Justice」、「Cook Up a Storm」、「End of Summer」などの作品を手がけている。

チャン氏:ワン監督は、低コストで高品質の作品を作りたいと希望していました。私はDIの分野で長年経験を積んできましたが、今回のような課題には、いつものようにリラックスして臨む訳にはいきません。

URSA Mini 4.6Kで撮影したRAWフッテージを実際に初めてDaVinci Resolve Studioで見るまでは、監督のビジョンが分からなかったとチャン氏は言う。

チャン氏:15ストップのラティチュードで撮影しているので、ハイライトや暗い部分に埋もれたディテールを確認して、回復することができました。私が一番驚いたのは、室内の窓辺で撮影した逆光のシーンでした。窓辺で撮影した逆光のフッテージで、ここまでディテールを維持できるハイエンドのデジタルフィルムカメラは見たことがありませんでした。

同作のルックについて、チャン氏は次のようにコメントしている。

チャン氏:黒い部分を緑がかったルックにしたくなかったんです。人物の顔が汚れているように見えてしまいますから。特にこの作品は、暗めのスキントーンの台湾先住民族を描いていますし、多くのシーンは照明が十分ではありませんでした。さらに主人公のアリフはトランスジェンダーで、「美」に携わるプロのスタイリストです。私は、スキントーンとリッチなカラーを慎重にグレーディングすることで、繊細で感傷的という主人公の人物設定をサポートしようと思いました。

「アリフ、ザ・プリン(セ)ス」のルックを設定する際、最初に3つのトーンを作成して監督に選択してもらいました。1つ目は、黒い部分には赤茶色が、そしてニュートラルカラーを含むミッドトーンのエリアには淡い青がかっており、人物が背景から浮き出るような感じのルックでした。2つ目のトーンは前述の色をより強調したものです。そして3つ目は、グレーディングを抑えた自然でニュートラルなトーンです。

写真提供:Modern Cinema Production Co

ワン監督は、日中の屋内および野外のシーンでは、2つ目のトーンを選択した。この作品は3つのストーリー軸で成っている。すなわち、アリフと彼のおてんばなルームメイトのストーリー、夜な夜なドラッグクイーンに扮する公務員のストーリー、そしてトランスジェンダーのパブオーナーと彼女が想いを寄せる配管工のストーリーである。チャン氏はシーンやストーリーに応じてさらに調整を施していった。

チャン氏:欲情的なシーンでは、紫を多く取り入れました。また、パブでのシーンでは、DaVinci Resolve StudioのPower Windowを使って特定のエリアで照明の色のサチュレーションを上げることで、イメージを魅惑的な音楽とマッチさせることができました。そして病院のシーンは、グレーがかった暗めの青いルックにしました。夜の屋内のシーンでは、窓や窓周辺のエリアに濃い青を入れ、光源の近くは温かいトーンを強調して空間の奥行きを広げました。

海辺のシーンと駅のシーン、そしてアリフとおてんば娘の息子が出てくるシーンでは、ハイライトの温かなトーンを強調したという。

チャン氏:アリフが性転換手術を受けた後、継承の儀式のために部族の元へ戻るシーンでは、黒いエリアに赤茶色のトーンは使わず、代わりに青を加えることで赤い伝統衣装を際立たせました。衣装の赤を強調しつつ、唇の色は変えたくなかったので、衣装や髪飾りの他の色を分離させて強調しました。DaVinci Resolve StudioのPower Windowとトラッキング機能は非常に便利で性格なので、時間を大幅に削減できました。

ワン・パンユン撮影監督は、同作のDIについて次のようにコメントしている。

ワン氏:ゾーイは彼女がこれまでに培った経験と技術を基に、色やディテールが観客にとってパーフェクトに表示されるよう各フレームを作成しました。特にアリフが身につけている衣装や髪飾り、そして継承の儀式のシーンでは、鮮やかな色とそれにマッチする明度/暗度が精密に計算されています。ゾーイは大作のみならず、超低予算の作品でもグレーディングを完璧にこなしてくれます!

写真提供:Modern Cinema Production Co