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[CP+2013:新映像創世記]Vol.06 キヤノンに見る、新たなクリエイティブの予兆

#Report NOW! #CP+ #CP+2013:新映像創世記

2013-02-10 掲載

txt:石川幸宏 構成:編集部 ※ステージ画像提供:キヤノンマーケティングジャパン(株)

思わぬ発見があるCP+

CP+は主にコンスーマ向けの展示やセミナーが中心のエキシビションだが、今なお動画セミナーには人気が集まるなど、デジタル一眼ムービーをはじめとする動画制作への関心も年々高くなっている。主にハイエンド・アマチュア層に向けた内容が多くプロ映像制作者には物足りない部分も多いかもしれないが、中には思わぬ発見もある。

この展示会での中心的な存在は、何と言ってもニコンとキヤノンの2大カメラメーカーだが、 中でも今回の来場プレスの投票により決定される、優秀出展社賞で金賞を受賞したキヤノン / キヤノンマーケティングジャパンでは、一昨年に発表したデジタルシネマカメラのラインナップ”CINEMA EOS SYSTEM”のコーナーと専用展示会場を設営し、ムービーカメラのソリューションにも力を入れていた。またEOS C300関連のイベントもキヤノンブース内のメインステージで催されている。開催2日目の2月1日には、「CINEMA EOS SYSTEMで全編撮影 /堤幸彦監督に聞く。映画『くちづけ』の深くてイイ話」と題されたトークショーが行われた。

EOS C300 4台+EOS 7Dの計5台のカメラを使って撮影された映画「くちづけ」。この日は堤幸彦監督と主演の一人である竹中直人さんが壇上に登場して、興味深い内容が語られた。「テレビ出身の自分としては、常にコンパクトで早く撮影出来て、しかも映画でも通用する美しい画質で撮影できるということで、以前から5D MarkⅡや7Dで作品撮影をしてきた」と語る堤監督。

CP2013_ishikawa_1.jpg トークショーに登壇した堤幸彦監督と出演者の竹中直人さん。会場は大勢の観客で埋め尽くされていた

『くちづけ』は、2012年末に解散した劇団「東京セレソンデラックス」の大ヒット作品。”ひまわり荘”という知的障害者の社会更生のためのグループホーム(共同住居)で起こるできごとを綴った笑いと涙の感動作。堤監督はこの舞台作品を映画化するにあたって、舞台と同じ芝居の緊迫感を引き出すため、ひまわり荘のセットを東映撮影所内につくり、20分という長い1カットを4台のEOS C300と1台のEOS 7Dで一度に撮りきるという手法に挑んでいる。

今回の撮影では『一度に沢山のカメラを並べられる』というという所に意味がありました。元は演劇のお話で、1シーンが台本で約20ページという長いものです。舞台劇なので芝居を途中でカットしたくなかったので、この20ページ(=20分)分を1カットで途切れること無く撮りたいと思いました。 普段は僕も1カットを数秒単位で細かくカメラ割りを決めて撮っていきますが、今回はEOS C300×4台とEOS 7Dの計5台を使って計3〜5回、カメラ位置を変えて20分の芝居を一気に撮ることで、3回ならば計25台分の素材を撮影できました。もちろんフィルムでも複数台を並べることは出来ますが、長くても10分しか続けて回す事が出来ません。EOS C300を数台並べて撮る事で、映画的なカットのアプローチに挑戦しつつ、かつ長い芝居を切ること無く演劇をそのまま撮影するできたのです。

堤監督は今回の撮影で、初めて絵コンテを描かなかったという。普段は細かいカメラ位置やフレーミングを絵コンテで指示しているが、あらかじめ絵コンテを描く事で芝居が制限されてしまい演技の自由さが失われるからだ。複数台のカメラで芝居を多方向から切り取ることで、役者は本気で慟哭するほど演技に集中できるなど、深い芝居が撮れたという。日本映画ではとりわけ狭いスペースにおける、こうしたシチュエーションで撮影される作品が多いが、フィルムカメラやこれまでの高価なデジタルカメラではバジェット的にも複数台で撮影することは難しかった。しかしEOS C300のようなカメラであれば、機動性と画質という長所を活かしつつ、レンタル料も安くレンズバリエーションも豊富なので、カット数を豊富に撮影することが可能だ。それは後の編集段階でもストーリーテリングのための必要充分な情報量を得ることができ、これまで日本の映画制作では難しかった、編集=リシューシング(再撮影)、リディレクティング(再演出)といった編集テクニックを活かす部分でもより緻密な作業可能になる。それはすなわち作品の質の向上へとつながるだろう。

CP2013_ishikawa_2.jpg 複数台のEOS C300での撮影に、これからの映画撮影に新しい可能性を見いだしたという

また撮られる側の意見として、出演した竹中直人さんもこの撮影は良い経験だったと語る。

今回、カメラが5台もあるということが衝撃的でした。色んな角度にカメラがあるという中で芝居をするというのはとても勉強になりましたし、効率的で無駄な時間を排除できますね。カメラが5台もあると緊張感も増したので、出来上がった映像を見てみると舞台劇でありながら、とても映画的な奥行きや立体感が感じられました

映画『くちづけ』5月25日より全国ロードショー
公式サイト
http://www.kuchizuke-movie.com

また堤監督はTBS系の人気TVシリーズ「SPEC(スペック) 警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿」の、この秋のオンエアが予定されているスペシャルドラマ「SPEC〜零(ゼロ)」を同じEOS C300で撮影中で、また今秋に劇場公開予定のシリーズ完結編となる映画「SPEC 劇場版〜結(クローズ)」では、最新のEOS C500の投入を計画しているという。

『SPEC』
http://www.spec-movie.jp

DSLRムービーの明日

CP2013_ishikawa_3.jpg ある意味で、現時点でのDSMC(スチル&ムービー撮影カメラ)の完成形ともいえるパナソニックのLUMIX DMC-GH3

大判センサーを搭載した新しいシネマカメラが各社から次々と発表される中で、今回のCP+2013を見る限りでは、パナソニックのGH3がその完成形と言えるのかもしれない。様々な撮影モードの搭載やマイクロフォーサーズの拡張するレンズラインナップなど、誰もが手が届く価格帯とマイク、リグ、フォローフォーカス、スタビライザーなどの周辺機材の充実は、ある意味でこの数年間、市場で育まれたDSLRムービーというジャンルにおいては一応の完成を見せたといっても過言ではない。その中でわき上がってきた4Kという新たな動き。総務省は2014年夏に4Kによるテレビ放送スタートに向けて諸般の策定を進めることを発表し、これは日本の映像制作にとっても大きな変革を迎える事になる。このCP+2013の会場でも各メーカーの担当者からは、自ずとこの話題が語られる事が多かった。それだけ注目されている4Kではあるが、実際の運用には機材も含めてまだ全くの未知数という部分が多い。また4Kとなると解像度の高さにおける構図の決め方、レンズの選び方なども含め、これまでのHD制作とはまた異なる次元のテクニックも要求されるという。

そんな中で映像制作者に限らず、新聞社などの報道関係やスポーツカメラマン、また記録映像などのカメラマンにも注目されているカメラが登場した。キヤノンのEOS-1D Cである。CINEMA EOSのラインナップであり、かつEOS-1D Xとほぼ同等の最上級スチルカメラの機能を有するこのカメラの登場で大きなインパクトとなるのは、4Kのムービー映像から4096×2160ピクセルという静止画像を切り出せるというところだ。HDからの切り出し画像の100%解像度で得られる印刷サイズは、横幅10cm程度が限界だ。4Kならば雑誌等の印刷基準となる350dpiの100%でおよそA4サイズ弱、300dpiでもおよそB4サイズまでの引き延ばしが可能で、 特にスチルとムービー双方をこなすカメラマンにとって、このサイズで印刷に耐えうる画像が動画から直接切り出せるというメリットは非常に大きい。

CP2013_ishikawa_4.jpg 4K作品「FLAME FRAME」のロケ現場。EOS-1D Cの機動力を活かして、あるシーンではドキュメンタリー風に撮影された

このEOS-1D Cのメリットと、様々なシューティングポイントを活かした作品展が近々開催される。映像作家、貫井勇志氏による『FLAME FRAME』だ。この作品はEOS-1D Cで撮影された4Kムービーとそこから切り出された静止画像による作品展で、EOS-1D Cで撮影された作品として4Kムービーとスチル作品を同時展示するというのは、おそらく世界初となる。

CP2013_ishikawa_5.jpgEOS-1D Cで撮影する監督・撮影監督の貫井勇志氏

自身初の4K映像制作に挑んだ貫井氏は、

4K撮影というのは、例えば紙の質にこだわって印刷することに似ているかもしれません。インクが滲んでしまうような紙(=これまでのHD)に細い線を書いても輪郭はぼやけてしまいますが、インクがパシッと載る紙(=4K)に細い線を描けば、やはり見え方もかなりシャープになって、これまでとは違って見える。そうすると、それに応じてデザインも変化していく…そんな感覚に似ています。これまで撮れなかったものが映って、これまで味わったことのない映像として見えるようになると、構図やレンズを選ぶ幅も大きく変わると思いました。HD制作でやっていた設計のままで4K撮影したのでは、同じように作品を成立させることは難しいと感じました。ポストよりもよりプリプロダクションに時間を割くという制作スタイルに変えないと、HDと同じ感覚では本当の4Kの良さを映像に活かすことは難しい。だから撮る側も4Kを撮るための習熟度を上げていく必要があると思います。

CP2013_ishikawa_6.jpg 「FLAME FRAME」は初デートを前日に控えた男女の物語。恋い焦がれる妄想シーンはモノクロで演出されている

『FLAME FRAME』
東京:2月14日〜20日 キヤノンギャラリー銀座
大阪:3月14日〜19日 キヤノンギャラリー梅田
http://cweb.canon.jp/gallery/archive/nukui-cinemaeos/index.html
(※注:ともに日曜・祝日は休業)


Vol.05 [CP+2013:新映像創世記] Vol.07

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[ DATE : 2013-02-10 ]
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