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[デジタルシネマの歩き方]Vol.10 東映大泉撮影所「MA NEXT」

2016-07-26 掲載

txt:林和哉 構成:編集部

東映大泉撮影所に新しいコンセプトのMA室が誕生!

DC_vol10_MA1-1

2016年初旬、「映画の創られる街・大泉学園」に居を構える東映大泉撮影所に新しいコンセプトのMA室が開設されました。筆者はもっぱらMA作業をお願いする立場のため、新しいMA室を開設するに至った現状の問題点やその解決に費やされるアイディアに興味を持ちました。そこで、運用開始して落ち着いた時期を狙って、ちょっとお邪魔してみることにしたのでした。

正門を通ると直ぐ目に飛び込んでくる東映デジタルセンター。そのなかにハイエンドのポストプロダクションを提供している東映ラボテックがあります。その横には良質なコンテンツを作り続けてきた強みで、製作ラインがどんどんと増えているという東映テレビ・プロダクションがあります。所内の撮影スタジオを縦横無尽に駆使し、まさにワンストップソリューションを提供しているわけですね。

さて、お話を伺ってみました。この新設MA室は「MA NEXT」と名付けれています。既存MAスタイルの次のスタンダードを目指して、という願いが込められているそうです。

主な仕様とセル型設計

DC_vol10_Artist-Series Artist Series。レスポンスの良さは折り紙付き

ミキシングの視聴環境は7.1ch対応。現状の映像コンテンツ全てのMAが可能ですね。基本部分はしっかりと押さえられている所が、信頼の三角マークですね。今回注目したのが、セル型設計というものです。セル型設計が施されているのが大きな特徴です。

DC_vol10_Surround-speakers サラウンドスピーカー

大きな一区画を、MA1(メインの区画で、ゆったりとしたソファなどがあります)、MA2(サブブース化が可能)、メインブースという3つの完全に仕切られた部屋に分割し、用途に合わせて組み合わせて使用するというものです。面白いのが、MA2は2ch MA室ですがマイクを設置してミニブースと化すことです。このことによって、様々な組み合わせでの運用が可能になるのですね。

DC_vol10_MA1-2 MA1 DC_vol10_MA2 MA2 DC_vol10_MainBooth メインブース

セル型の功能

■本編のMAをしながら、予告編もMAを出来る

MA1で本編のMAをしながら予告編の2ch MIXをMA2で平行して行えます。

■ハイブリッドブース
DC_vol10_MA2sub MA2のサブブース化

こんなことが想像できます。演出家が全員を呼んでADRを要望する(割と多く、芝居の臨場感も違いますね)。キャストのブッキングもブースのスケジューリングも大変。そこで、MA1から、メインブースとMA2可変サブブース2つのブースを合体。チャンネルは全て独立しているので、俳優を全員揃えて、別々のブースでそれぞれの役者のセリフをかぶらせない形で録音出来る。一回の呼び出し、同じ時間で一気に録音。

■ADRとMAが直結しているので、移動もしないでよく、スケジュールが1回で済む

その他にもいろんな事が考えられそうです。東映ラボ・テック取締役映像プロセス統括部長・長谷川光司氏によると、

長谷川氏:お客様がどんなご要望を出していらっしゃるのかが楽しみです。3つのセルで柔軟に対応し、ノウハウにしていきたいです。

新しいアイデアの結晶

DC_vol10_monitor ブースとの連絡モニター

MA NEXTに伺って、しばらくして不思議な事に気づいた。(おや?ブースの窓がない……)そう、ブースの窓がないのです。

DC_vol10_overall_cell 各セル全体を見ることも出来ます

ブースとはセッティングされたカメラとモニターを介してコミュニケーションを取る形なのですね。この部分、実際に使う人からも意見を貰いながら、進めたと言います。

DC_vol10_fujisawa MAチーフの藤沢信介氏

藤沢氏:窓があることで、そのフレームと窓の凹凸が余計な反響を生み、少なからず音が濁ります。これまではそれを飲み込んで、敢えて問題にせずに来ました。今回は、コンパクトに収めよう、という趣旨で進めたことが逆に功を奏し、長年気になっていた窓を設計の段階で廃止することにしました。不便は感じないですね。音も素直に回っている感じがします。

DC_vol10_inside-a-room コンパクトで使い勝手の良い室内

近年、映画の世界もコンパクトになってきました。ポスト作業では、使い勝手が良くてすぐ答えが見れることが重要になり、映像の編集スタジオは、本編集しながら横でオフラインの微調整、CG加工を行うスタイルが常態化しました。これは、営業利益を上げる狙いでなく、お客さんの効率を優先することからドンドンと進化した形です。音の世界も、小回りが効き、使い勝手の良い部屋が望まれています。そういったなかで、実に面白い部屋が出来たと思います。

長谷川氏:時代が良くなったんですよね。今までだったら“コストを考えるとここまでしか導入できない”というジレンマがありましたが、機材が安くなったことで同じ予算でもかなり贅沢な設備が整えられました。

DC_vol10_speaker 鳴りの良いスピーカーたち。エイジングして益々つややかに伸びやかになっていきます

すでにオンエアにかかる各種ドラマのMAが進行中だそうですが、いろんな方々とのコラボレーションを活発にしていきたいと考えていらっしゃるそうです。新しい使い勝手に興味のある方は是非、覗いてみてください。

DC_vol10_Machine'sRoom マシンルームには黒Macが沢山

WRITER PROFILE

林和哉 映像プロデューサー/ディレクター。入口から出口まで全てのポジションを守備範囲にしている。最新技術が好物で、各種セミナー活動も豊富。


[ Writer : 林和哉 ]
[ DATE : 2016-07-26 ]
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