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[東京Petit-Cine協会]Vol.80 映画を作った意味を証明するということ

2017-01-24 掲載

txt:ふるいちやすし 構成:編集部

「千年の糸姫」動く

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しばらく進展のなかった私の映画「千年の糸姫」(二宮芽生主演)に年末から一気に動きが出た。まずはロンドン・フィルムメーカー国際映画祭2017からオフィシャルセレクションへの入選の報告を受け、更に最優秀監督、音楽、主演女優、主演男優、ヘアメイクの5部門ノミネートという信じられないことが起こった。特に音楽とヘアメイクは、我々が入選した長編外国語映画の部門だけではなく、全部門からのノミネートになる。

まだ受賞したわけでもないのだが、これほど喜べるのにはわけがある。作品が完成してからまだ一年に満たないが、その間、何もしていなかったわけではない。いや、むしろ必死で動いていたのだ。そして何の結果も出せない状況が苦しくて仕方がなかった。このコラムの性格上、今の喜びをひけらかすよりはその苦しみを告白するのが筋だろうと思い、全てを告白しようと思う。

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以前からの読者の方はわかっていると思うが、そもそも私自身に作品を作る能力はあっても、宣伝、配給、上映に至っては今まで失敗したことしかない。もちろんそれによって学ぶことも多かったが、結論として自分にはとても無理だと悟り、今回のプロジェクトではプロデューサーに託すことにしたのだ。お陰で私は作品を作ることに専念し、むしろ今まで以上に、出来上がった後のことは何も考えていなかった。

そして作品は、資金の提供は様々な方から受けたものの、権利関係は全て自分の手にある、完全な自主制作作品として私の手の中に残った。途方に暮れたが、とりあえずやれることをやるしかなかった。それが映画祭への一般応募だ。これには多少の経験もあり、星の数ほどもありそうな世界の映画祭から意味のあるものを選んで応募する目利きも多少はあると思う。例え入選したり何かの賞を貰えるようなことがあっても、日本での配給、上映にはほぼ関係ないということは常々ここで語ってきたことだが、少なくともできることから、そしてこの映画を作った意味があったことをまずは証明する必要があった。それは私の監督としてのケジメのようなものだ。

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美意識は人の数だけある。その全てが尊いものだと私は思う。ましてや映画の現場に集まるような人々の美意識は、それをそれぞれの経験や技術で磨き上げてきたようなものばかりだ。明らかにおかしなものを排除するのはある意味簡単なことだが、多くの美から一つだけを選ぶということは、私の信念だけでは到底できないことで、チームの全員が理解し、信じ、時には自分の美意識をも忘れて、私の示す一つの方向へ向かわなければならない。

これは大変難しいことで、ただ監督の言うことだから、というわけにはいかない。納得できるまで話し合い、稽古を重ねることが必要だ。そして今回はそれができたのだ。この無名監督の示す美を、出演者もスタッフも信じてくれたのだ。それだけにその道は正しかったのだということを、少しでも形にしないと申し訳が立たない。

もちろん、それを多くの人に興行という場で支持されることに越したことはないし、今もそれが目標であることに変わりはないのだが、まずは一つ、どこかでそれが認められ「これは美しい」「意味のあることだ」と評価されることが必要だった。ましてや私の美意識は挑戦的で冒険だ。正直、チームのみんなにとって半信半疑なところもあるだろう。だからこそ、一つでも結果を出さなければまともに会うことも許されないとさえ思っていた。

もちろんロンドンが最初ではない。いくつかの映画祭に応募して、いくつかの落選の知らせも受けた。その度に「この映画を作った意味はない」と言われているような気になった。そんな中でのロンドンでの入選。特にこの地は過去に私が音楽家として挑戦をしていた思い入れの強い街だ。その街で多くの作品の中から「千年の糸姫」を美しい映画だと感じ、その地の人々に見せたいと上映作品に選んでくださった。それだけでどれほどホッとしたことか。ついにチームのみんなにこの報告ができることの喜びが、どれほど大きいものか。

その上、特に多くを語り合って作り上げた演技やヘアメイクが最優秀賞にノミネートされたことは、本当に誇りに思える。その先の授賞というのは時の運でもある。欲がないと言えば嘘になるが、まずはここまでで大喜びしたいし、チームのみんなに笑って会えることの喜びを噛みしめたいと思っている。

実は年明け早々、もう一つの嬉しい知らせを受け取った。2月1日~3日に東京・永田町、憲政記念館で行われるアジア国際映画祭に招待作品として「千年の糸姫」が選ばれた。始まったばかりの映画祭だが、しっかりとした理念を掲げた、アジアの平和の為の文化交流を目的とした映画祭だ。

実はこの作品のテーマから、いつか必ず韓国や中国の人々に観て戴きたいという思いがあった。この映画祭への参加が何かのきっかけになればと楽しみにしている。「千年の糸姫」の上映は2月2日。機会があればご覧になって戴きたい。あ、もちろん2月16日のロンドンも、お近くにお寄りの際は、ぜひとも!次回はこの二つの映画祭のレポートになりそうです。お楽しみに!

■「千年の糸姫」予告編

(123min. HD color)

ふるいちやすし:作・監督・音楽

二宮芽生 主演
藤原シンユウ
山口快士
高瀬媛子

紅壱子
深澤千有紀
久保田芳之 他

【あらすじ】
山あいの小さな町に住む女の子「糸」は、かつてこの地を納め、非業の死を遂げこの地を奪われた糸姫の生まれ代わり。死の間際、糸姫がかけた呪いを千年の時を経て今もこの地に残る仇の宇津家に果たそうと、一族の夫々の生まれ代わりが集まりだすが、その中には千年糸姫に仕え、慕い、呪いという修羅の道から救おうとする者もいる。当の糸はまだ覚醒しておらず、自分の運命にも気づかないまま、仇の生まれ変わりである宇津輝昭に引き付けられていく自分に戸惑う。何も知らない輝昭はやがて糸に思いを寄せるが、千年のその日、ついに糸姫が降臨し、糸が覚醒する。


WRITER PROFILE

ふるいちやすし 自身で脚本、監督、撮影から編集、音楽までもこなすマルチプレーヤー。


[ Writer : ふるいちやすし ]
[ DATE : 2017-01-24 ]
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