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[江口靖二のデジタルサイネージ時評]Vol.33 CES2018で見たデジタルサイネージ関連の展示から

2018-01-30 掲載

txt:江口靖二 構成:編集部

CESは家電ショーから大きくその領域を拡大している中で、デジタルサイネージやリテールの現場などでのB2B領域もたくさんの展示が見られるようになってきた。今年の展示からいくつか気になったものを紹介をしたい。

サムスン

サムスンのメディア向けカンファレンスで発表された「The Wall」

サムスンはマイクロLEDディスプレイ「The Wall」を発表した。マイクロLEDディスプレイとは、バックライトにLEDを用いるのではなく、RGBそれぞれの極めて小さいLEDを画面に並べた方式だ。LED自体が発光するのでカラーフィルターが不要であり、発光しなければ完全なる黒が実現できる。こうしたLEDディスプレイは、屋外ビジョンではすでにおなじみであるが、LEDのサイズがせいぜい1ミリピッチ程度なので、家庭のテレビのような視聴距離やサイズには向いていない。

サムスンブースでの展示の模様

今回展示されたサムスンのマイクロLEDディスプレイ「The Wall」は146インチで解像度は4K。輝度は2,000nitsとのことである。ユニットを組み合わせてディスプレイ化するようだが、ユニットのサイズや解像度は公表されていない。画質は若干白トビがあるもののかなり良好だ。4Kということは2500万個ものLEDを実装していることになるので、製造面、制御面の両方から極めて高い技術が必要で、どれくらいの価格になるかどうかは未知数である。

中央上部の平行線はブース照明の映り込み

LG

LGブースのエントランスのOLED

LGは昨年同様にカーブドのOLEDをエントランスに大量に設置した。昨年はかまぼこ状の天井を覆い尽くしたが、今年は写真のような蛇行した通路の壁面に凹と凸のディスプレイを設置した。何面のディスプレイがあったのか、数え切れなかったが、非常にダイナミックな空間を形成していたことは確かだ。

しかし個人的には、その画面サイズ、映像の美しさが故に、逆にベゼルが気になった。エッジ部分を内側に丸め込めばベゼルを極限まで小さくすることは不可能ではないだろうが、現実的かどうかはわからない。例えばLEDディスプレイであれば、ユニット化することでベゼルレスの大画面が構成できているのに対して、OLEDが今後こうした大画面のサイネージ用途でどこまで普及していくか注目したい。

パナソニック

複数カメラからの映像を重ねる

パナソニックはイマーシブエンターテインメント(没入型のエンタメ)というコンセプトで、スタジアムでの新しい映像表現のデモを行った。一番背景にプロジェクターでスタジアム全景を表示し、観客のスタンドの前に特殊スクリーンを貼った当面なパネルを設置して、競技に関連する情報や応援メッセージやチアリーダーのパフォーマンスを投影してな盛り上げるような演出を提案した。いわゆるMR(Mixed Reality:複合現実)による演出で、実際には最背景部分は映像ではなく本物のスタジアムであるという前提である。

さらに透明なパネルは2重に設置されているので奥行き感がある。写真からは実際の見え方は伝わりにくいと思うが、なかなか効果的な映像表現である。問題はどういうシーンでこれを実装していくのかで、このデモはスタジアムのVIP席のような設定である。

チアリーダーが登場 透明なスクリーンは2重に設置されている

Citybeacon

写真左:上部には55インチのLCD、写真右:横面には32インチのタッチパネル

LinkNYCと同じコンセプトの、都市型のデジタルサイネージであるCitybeaconがインテルブースで展示を行っていた。機能は

  • セキュリティカメラ
  • サイネージ広告
  • VOIPによるコミュニケーション(電話や非常通報)
  • Wi-Fiスポット
  • タッチパネルによる案内サイネージ
  • モバイル決済(パーキングなど)

となっており、インテルのXEONプロセッサーで動いているようである。元祖とも言えるLinkNYCの稼働状況はここで確認することが可能で、執筆時には1289台が稼働中で、278台が準備中となっている。

AIPOLY

商品を認識している様子

Amazonが1月22日からいよいよシアトルでAmazon GOの1号店を稼働させたようであるが、SANDS EXPO会場のEureka Parkエリアに小さなブースを構えたAIPOLY社の技術はまさにこれと同じものだ。複数台のカメラによる画像認識処理で、手に取った商品を認識し、レジの支払い処理をすることなく商品を購入できるシステムである。

考え方は入店時にアプリなどで入店者とアカウントを特定し、手に取った商品に対して決済を自動で行うものだ。画像認識が非常に高度になり、かつ店舗においては扱う商品は決まっているので予め商品画像を複数の角度から登録をしておくことができるので認識精度はかなり高くなる。

こうしたAutonomous Store、自動化店舗とでも訳せばいいのだろうか、こうしたものが今後どこまで普及していくのだろうか。担当者に、「箱モノではなく、例えばジャガイモもとかの場合はどうするのか?」と訪ねたところ、「良い質問だ」とだけしか答えは帰ってこなかった。

実はCESでは数年前から入場パスはICタグ化していたのだが、今年はまたQRコードに戻っていた。つまりこうした自動化店舗の場合に、商品一つ一つにICがタグを付けることはコストと手間の両面からまだまだ現実的ではない。箱モノ商品にすでについているバーコードをカメラで認識させるのは現時点では困難である。

人物を認識している様子

このように、デジタルサイネージ周辺の展示は、春に開催されるDigital Signage EXPOと変わらないか、センサーや画像認識を応用したソリューションとしてはむしろCESの方が多様なものが見ることができる。デジタルサイネージ関連の方々は、来年からはぜひともCESにも参加されてはいかがだろうか。


WRITER PROFILE

江口靖二 江口靖二事務所主宰。現在デジタルサイネージコンソーシアム常務理事などを兼務。


[ Writer : 江口靖二 ]
[ DATE : 2018-01-30 ]
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