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[江口靖二のデジタルサイネージ時評]Vol.36 「Digital Signage Expo 2018」定点観測

2018-05-11 掲載

txt:江口靖二 構成:編集部

世界最大規模のデジタルサイネージの展示会が開催

Digital Signage Expoのロゴも15周年仕様となっていた

世界最大規模のデジタルサイネージの展示会であるDigital Signage Expo(以下:DSE)に今年も参加してきた。同イベントは今年が15周年であるが、筆者は11年連続で11回目の参加となる。ではその概要を定点観測的にレポートしたい。

今年もさまざまな表示装置がDSEに登場

DSEでは毎年通常のLCD、LED、プロジェクターとは異なる表示装置や利用法が出展されることが多い。今年も幾つか注目されていたものを紹介してみたい。

ソニーのCrystal LEDディスプレイ

まず最初は、ソニーの「Crystal LEDディスプレイ」がDSEに初登場した。Crystal LEDディスプレイはバックライトがLEDなのではなく、画面表面にRGBの極めて微細なLEDを配置して、各画素毎に駆動させる自発光のLEDディスプレイである。IBC、CES、NABではすでにおなじみになりつつあるが、使用用途の本命とも言えるデジタルサイネージの展示会DSEには初登場である。その画質や鮮やかさは圧倒的で、サイネージ関係者の注目を集めていた。

サムスンの世界最狭額1.2mmの55インチLCD「55SVH7E」

Crystal LEDディスプレイ以外でも、ドットピッチが1ミリ台のLEDディスプレイが多数登場している状況においては、サムスンはベゼル幅が1.2ミリという世界で最も狭額のLCDも、LCDをマルチに組んだ大画面構成ではどうしてもベゼルが気になってしまう。今後は100インチを超えるような大画面ではベゼルレスが主流になっていくのではないだろうか。

また一昨年くらいから登場していた空中に映像が浮かんでいるように見えるディスプレイが、今年は大型化と高解像度化を実現してきている。構造としてはプロペラのような十文字の回転翼に搭載されたLEDが高速で回転することで映像を表示させるというもので、安定した高速回転と回転翼の大型化、そして表示制御技術の進化により、表示品質が大きく向上している。初めて見る人はどうやって映像を表示しているのかわからず、物珍しさも手伝って空中に浮かんだ映像を思わず見入ってしまうほどだ。

Hypervsn1 3×3のマルチ大画面表示 回転翼を横から見たところ

このタイプのディスプレイは複数の会社が製品を展示していたが、中でもKino-mo社の「Hypervsn」は3×3の合計9機の回転翼をマルチ化して大画面を実現させており他社を圧倒していた。今後はマルチに加えて、回転翼自体を電車やバスに設置されていた扇風機のような動きにすることで立体的な映像表現を目指しているとのことだった。

REALFICTION社の「DeepFrame」向こう側がくっきりと透けて見え、映像もクリア

空中に浮かぶようなものとしては、透明度の非常に高くクリアなハーフミラーにLCDの映像を反射させて、かつ向こう側が透けて見えるような製品としてREALFICTION社の「DeepFrame」が出展された。画像の鮮明さと透過は極めて良好であるが、イーゼルのような構造のミラーの設置環境が制約されるので、実際の使用用途は限定的なものになるように感じた。

イーゼルにカラス版が載っているような構造。写真右側の台の中にOLEDが設置されており、ハーフミラーに写ったOLEDの映像を見る

一方、あまり進化も普及も進んでいないのが透明のLCDだ。理由はやはり価格のようで、需要が大きく動かないので価格が下がらず、価格が下がらないので需要もなかなか伸びないという悪循環に陥っているようだ。

透明度も高く、発色も鮮やかな透明LCD

今年の目玉のもう一つは、EINKのフルカラーの電子ペーパー「Advanced Color ePaper(ACeP)」である。これまでのカラー版と比較すると圧倒的に発色が向上している。ただ現時点で残念なのは、画面を切り替える際にRGBのそれぞれの層のリフレッシュに時間がかかるようで、点滅しているように見えてしまう。この点はEINKも大きな課題と認識しているようで、技術開発の途上にあると説明をしていた。

この問題が解決されないと、比較的頻繁に表示を切り替えるような利用は厳しい状況だろう。例えば駅の時刻表のようなものや、動画CMよりはポスターのような利用であればコスト次第では十分将来性はあるのではないかと感じた。

EINK「Advanced Color ePaper(ACeP)」

なお電子ペーパーのデジタルサイネージ利用については、電子ペーパーコンソーシアムが中心となって10センチ角の「電子タイル」の開発を進めており、ビル壁面など数十から100メートル単位の巨大な表示環境への利用を検討している。

EINK「Advanced Color ePaper(ACeP)」画面切替時の様子

新しい用途の提案も

TOUCH INNONATIONS「ELITE」セッティングは1分で完了

デジタルサイネージのユニークな利用シーンの提案も見られた。その一つがTOUCH INNOVATIONS社のクラブDJ用のプロジェクターを内蔵したDJコンソール「ELITE」である。プロジェクターを可搬型の金属ケースに内蔵して、透明ガラスパネルに投影する。タッチ操作が可能なので、そのままDJプレイが可能。DJ側だけでなく、客側からも操作しているところが見えるところがポイントだそうだ。たしかにその通りだが、どれくらいのニーズがあるのかは筆者にはよくわからないというのが正直なところだ。

DJアプリ「Emulator 2」が含まれる

また、ありそうでなかったのが、巨大なソーラーパネル搭載のトレーラーだ。DC SOLAR社のトレーラーは120Vで12kWの出力が可能とのこと。デジタルサイネージ専用ではなく、農業、建設、ロケ、イベント、緊急時の利用を想定している。

可搬型のソーラーパネルを搭載したトレーラー

おもな出展企業の気になる動向

SCALAはパートナー企業とともにDSEで久々に最大規模のブースを構えた

ここ数年SCALAはブース出展を行っていなかったが、今年は久しぶりに大きなブースを構えた。2018年の2月にSTRATACACHEがSCALAの買収を完了したためだ。デジタルサイネージ業界においてSCALAはハイエンド市場で確固たる地位を築いてきたが、デジタルサイネージのコモディティ化によって苦戦を強いられてきたようだが、新たな支援先を得たことで再びメインストリームに復活をしてくるだろう。今後のSCALAには注目したい。

数年前には巨大なブースを構えたX2O Mediaは1コマスタンドブースに縮小

一方、HTML5ベースのサイネージソリューションのX2O Mediaは、年々ブースは縮小傾向だ。HTML5でのさまざまな制約がクリアになっておらず、期待されたようにはWEBベースのサイネージが伸びていないのが現状である。

パナソニックはLinkRay(光ID)を引き続き積極的にアピール

パナソニックはLinkRay(光ID)のソリューションを全面に出して今年もブース訴求をしていた。LinkRayは照明やサイネージディスプレイの光源であるLEDの点滅をスマートフォンのカメラで認識して関連URLなどを伝送するもの。しかしスマホにアプリをインストール必要があることがネックとなっており、優れた技術をいかにしてフィールドに導入していくのかが試されている。


WRITER PROFILE

江口靖二 江口靖二事務所主宰。現在デジタルサイネージコンソーシアム常務理事などを兼務。


[ Writer : 江口靖二 ]
[ DATE : 2018-05-11 ]
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