創立50周年を機に2009年6月に東京・北青山に移転したナックイメージテクノロジー(Tel 03-3796-7901、以下ナック)は7月30、31日の両日、新社屋の紹介を兼ね、最新映像制作機材と講演会で構成したナック・オープンハウスを実施した。オープンハウスに合わせて30日に行われたツァイス認定サービスセンター開設セレモニーには、独カールツァイスのカメラレンズ・ディビジョンで開発ディレクターを務めるクリスチャン・バナート氏が来場した。

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ナックイメージテクノロジーが、世界初のツァイス認定サービスセンターとして稼働。来日した独カールツァイスのクリスチャン・バナート氏から、ナックの植木謙一社長に認定証が手渡された。


バナート氏はセレモニーで、ナックが代理店としては世界で初めての認定サービスセンターとなったことを発表。サービスセンター認定証が、バナート氏からナックイメージテクノロジー植木謙一社長に手渡された。サービスセンター認定セレモニーに続いて、カールツァイスの取り組みに関するプレゼンテーションも行われた。プレゼンテーションでバナート氏は、「サービスを充実させるためには何ができるかを考えた結果、サービスステーションを世界中に展開して行くことにした。価値観を共有でき、顧客の利用満足感の向上を考えていること、これまで長期にわたってパートナーシップを築いて来たことの3つから、ナックをサービスセンターとして認定するに至った」と話した。

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カールツァイスが開発した光学特性分析システムMTF-TesterK8を導入

今回、ツァイス認定サービスセンターとして稼働するにあたり、ナックはカールツァイスと同じレンズ検証設備を整えた。レンズ分解に必要な専用工具を100点以上揃えたほか、レンズ組み上げに必要なクリーンブースや、カールツァイスが開発した光学特性測定システムMTF-TesterK8を導入している。

認定サービスセンターの核となるMTF-TesterK8は、レンズ解像度とコントラストの管理・定量化を行うMTF(Modulation Transfer Function)の測定、アイリス変更時に生じるフォーカスズレであるフォーカスシフトの測定、バックフォーカス値のレンズセンターと周囲の差であるフィールドカバチャーの測定、バックフォーカス実寸値のフランジフォーカルディスタンスの測定などができる分析器だ。これまでレンズの分解調整はドイツ本社で行う必要があったが、MTF-TesterK8の導入によりナック社内でツァイスと同様のレンズ分解清掃・調整が可能になる。

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独カールツァイスでカメラレンズ・ディビジョン開発ディレクターを務めるクリスチャン・バナート氏

バナート氏は、今回のサービスセンターの開設の目的として、修理調整期間の短縮、修理コストの軽減、日本語での対応の3つを挙げた。サービスセンター認定にあたり、ナックの修理担当者に対してドイツ本社で2週間のサービストレーニングの研修を行ったことも明らかにし、本社と同じ精度でのサービスが可能になっていることを強調した。ナックでの調整サービスは、まずプライムレンズの調整から開始、他のレンズについても順次サービスを開始していくという。

ツァイス認定サービスセンターが稼働したことで、レンズを購入後のアフターサービスの向上だけでなく、個体差が少ないレンズを安定してレンタル供給できるようになりそうだ。

ナック取り扱いの最新映像制作機材も展示

オープンハウスに出展された主な最新映像制作・表示関連機材は次の通り。

■カメラ関連機材

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ARRIFLEX D-21に取り付けて機動性をアピールしていたのは、ワイヤレス/ワイヤード両対応のリング調整機構ARRI UMC-3Aだ。従来に比べて、モーターのトルクを増し、スムースなフォーカス/アイリス/ズーム調整が可能となった。

ARRICAMに取り付けられているのはHD-IVS STとツァイス製マスターマクロ100mmレンズだ。マスターマクロはレンズ先端から1cmくらいまで合焦すると言う。HD-IVS STは、フィルムカメラのモニタ出力用デバイス。ファインダー内にハーフミラーを設置し、フォーカシングスクリーンに結像した映像を映すことでモニタ出力する。ザラッとしたフォーカシングスクリーン特有の見え方も、キャリブレーションできる機能を持つ。

RED ONEに取り付けられていたのはアンジェニュー製ズームレンズOptimo RougeとARRI製ミニマットボックス。Optimo Rougeは、PLマウントで開放T2.8のスーパー35mmフォーマット対応スームレンズ。写真の16-42mmのほか、30-80mmがある。ミニマットボックスは、小型カメラ用として低価格でありながらも、ハイエンドプロダクション用と同等の取り扱い性を実現したシネスタイルアクセサリとなっている。

■ステレオスコピック3D関連機材

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ステレオスコピック撮影用の3D-Rigは自社開発。オープンハウス記念セールとして、ソニーXDCAM EX3用の3D-Rigセットを450万円(税別)で提供する。展示したミラー式リグのほか、平行式リグとトランスビデオ製12型液晶モニタを組み合わせたセットとなっている。オプションで、ミラーサイズの変更や平行式のリグサイズの変更、カメラポジション調整軸の追加といったカスタマイズも行うという。

3ality Digital製3DプロセッサーSIP2100は、クォンテルが輸入代理店を務め、ナックが販売する。ステレオスコピック撮影において映像信号から3D表示に必要なパラメータを分析し、3D映写可能であるかどうかをモニタ表示したり、微調整できる。2台のカメラを厳密に調整する必要のあるステレオスコピック撮影に欠かせないアイテムだ。

ステレオスコピック撮影においては、撮影時のモニタ環境も重要になる。ナックが取り扱う3D-Rigに組み合わせられているトランスビデオ製12型シネモニタHD 3DView(左)は、ステレオスコピック確認用メガネとセットとなる。シネモニタ上で3D立体視の確認が可能。右にある液晶モニタは3ality DigitalのSIP 2100の分析結果とともに赤青出力で立体視表示させている。

■照明機材

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ARRI製フレネルスポットライトがリニューアルしTRUE BLUEシリーズとして新登場。デイライトタイプのDシリーズと、タングステンタイプのTシリーズ・STシリーズがある。いずれも、ベンチレーションを改善して放熱効率を高め、フレネルレンズへの熱ストレスを軽減し、灯体温度を下げることに成功した。

ARRI製LED照明も展示。Pax Panel Kitsは、コントローラーで2,000~20,000Kまでの色温度に可変できるほか、roscoやLEEといったカラーフィルターに合わせたフィルタープリセットを搭載する。調光範囲も0~100%まで自由に設定できる。それぞれの光軸も調整されており、円形の照射範囲を持っていることも特徴だ。

■その他の機材

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ARRI製カラーマネジメントソフトウェアARRICUBE Creatorも出展。プリントフィルムを基準にした3D LUTを生成できる。カラー計測デバイスにはHubble製カラーメーターを使用しているため、プロジェクターを使用したスクリーン投影においてもカラーコントロールできることが特徴だ。

球体上に6ラインのLEDを配置し、1秒に8回転させることで表示させるパノラマ表示装置Panorama Ball Vision。写し出す映像は、視野角180度のレンズを持った小型ビデオカメラで撮影している。

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