PRONEWS

  • imgABOUT
  • imgTWI
  • imgFB
  • imgYTU

トップ > 特集 > [CineGear 2013]Vol.05 世界でつながるプロダクションシステム~Company 3 / デジタル・ガーデン:カラーコレクションの明日~

News

[CineGear 2013]Vol.05 世界でつながるプロダクションシステム~Company 3 / デジタル・ガーデン:カラーコレクションの明日~

2013-06-26 掲載

txt:石川幸宏/猪蔵 構成:編集部

ユニバーサル化するポストプロダクションその現状

先述のとおりポストプロダクションの現状としては、世界規模でのユニバーサル化は日々進展しているようだ。ハリウッドのプロダクションが海外に拠点を設けて、生産効率をあげる制作分業制は数年前から取られてきたが、ここで紹介する米ロサンゼルス・サンタモニカにあるカラーコレクション/カラーグレーディングの世界的なポストプロダクション”Company 3(CO3)”と、東京渋谷区広尾にある日本の大手CM制作ポストプロダクションである株式会社デジタル・ガーデンの提携による「リモート・テレシネ」とカラリスト派遣の動向のように、プロダクション間の提携によってユニバーサル化を進めているところも出てきた。

CGE13_vol05_01.jpg

CO3では現在、世界のプロダクションと提携して、”ヴァーチャル・アウトポスト”という遠隔操作によるカラーコレクションサービスを行っている。現在、米国内でも他の14社とのリレーションシップを持っているほか、海外拠点では韓国、インド、フィンランド、香港にも拠点があり、日本ではデジタル・ガーデンがその拠点となっている。

デジタル・ガーデンでは、2008年からすでにCO3と業務提携を結び、「リモート・テレシネ」というカタチで遠隔操作でのカラーコレクションサービスを進めてきた。「リモート・テレシネ」は、専用回線で双方のグレーディングルームをつなぎ、さらにビデオ会議システムでコミュニケーションを取りながら、世界最先端の感性と技術力をリアルタイムで共有できるというもの。つまり、クライアントは日本にいながらにして、CO3が誇るトップカラリストたちのカラー作業に立ち会うことができるのだ。

さらに、昨年10月からはデジタル・ガーデン内にブラックマジックデザインのDaVinci Resolveを導入したカラーグレーディングルーム「Bay204-HYBRID VISUAL BAY」を新設、リモート・テレシネの他に本格的なカラーグレーディングが出来るようになった。ちなみにデジタル・ガーデンの”Bay”という呼び名も、CO3で編集室の呼び名として使っているものを踏襲している。同時に本年度からCO3との連携を強化、同社から三ヶ月毎に1名、年間で計4名のカラリストを招へいしている。

CGE13_vol05_02.jpg

この招へいによって日本のDP(撮影監督)やディレクターとCO3のカラリストが直接、リアルな付き合いを持つことになり、人間同士がより深く理解し合う絶好の機会となっている。そして、お互いの信頼が成立すれば、彼らの帰国後はリモート・テレシネでスーパーバイズを受けることができるなど、双方にとっての有機的なメリットも大きい。

日米間の業務提携が生む化学反応とは?

CGE13_vol05_03.jpg (手前左)Company 3 カラリスト ラジーヴ・ベディ氏(後ろの列左から)リードコンポジター/カラリスト 二神真一氏、ビジネスサービス デパートメント 野田岳紀氏、イメージインテグレーション デパートメント 藤本恭有氏

二神氏:以前はリモート・テレシネの利用に関しては月に1〜2度といった割合でしたが、昨年10月からResolve(Bay204- HYBRID VISUAL BAY)が稼働し始めたこと、また、CO3から第1弾の招へいカラリストとして今年1月〜3月に常駐していたBrandon Chavez(ブランドン・チャベス)氏がカメラマンの方をはじめお客様から非常に人気があり、帰国後も「ぜひ彼にカラーコレクションをやってほしい」と彼を指名してのリモート・テレシネを利用されるケースも多くなりました。

野田氏:現在、Bay204では、カラーコレクション(グレーディング)とリモート・テレシネを両方行っており、部屋自体の稼働率もかなり上がっています。当社はCM作品がほとんどなので時期的なものもありますが、3月はほぼ毎日埋まっていた状況です。CO3からのカラリストの派遣はとりあえず1年間で4名を考えていますが、まずは1年間やってみて、その後はクライアント様からの反響、ご意見などを踏まえて、継続していくかどうか検討しようと思っています。

カラリストによってもちろんセンスも性格も違うので一概には言えないかもしれないが、日本のカラリストが一様にDPなどの指示に対して忠実に色を作って行くタイプが多い中で、CO3に代表される海外のカラリストは、クライアントの示す色の方向性に対していくつかのパターンを提示する提案型が多く、多いときには十数パターンを提案してくることもあるという。そうしたポジティブなクリエイティブの姿勢もカメラマンが好んでCO3のカラリストを指名することにつながっているのだろう。現在、デジタル・ガーデンのカラリストとしては二神真一氏が担当するほか、CO3からは2人目のカラリストとして、RAJIV BEDI(ラジーヴ・ベディ)氏が常駐している。その他にもフリーのカラリストが指名されて、Bay204でカラーコレクションをすることもあるようだ。

二神氏:いま当社がお付き合いのある、フリーのカラリストは40〜50歳代の方が多く、フィルム時代からの経験でカラリストになられた方が多いですが、最近はVEさんからカラリストになられた方もいます。デジタルの知識的には後者の方がテクノロジーにも精通している方が多いのですが、グレーディングの世界は知識があるから良いモノができるとは言えません。現在の撮影素材は、低予算の仕事に関しては100%デジタルになっており、予算のあるものでもフィルム撮影の割合はかなり減ってきています。当社の仕事全体でいえば1割程度がフィルムで、9割がデジタルといったところでしょう。しかし、現状ではどちらもあまり作業の手間に関しては変わりません。フィルムに関してはテレシネなどすでにこなれた作業なのでスタッフも慣れています。デジタルは理論上は楽なのですが、実際の現場では新コーデックなどを日々研究して新しい知識を持たなければならないので、見えない部分での負担はありますね。

一概に国や地域を超えて色の話をすることは非常に難しい。またテクノロジーやセンスだけでは超えられない文化の違いもある。グレーディングの基本となる色温度の差異はまさにそれだ。

二神氏:Bay204のカラーグレーディングルームを作るときは、CO3に色々とアドバイスを求め、部屋の内装などもできるだけCO3に近づけるように設計していたのですが、やはりアメリカと大きく違うのは色温度の問題が大きかったです。結局、アメリカはすべて6500K基準で、壁の色にしてもすべてそこに合わせているのですが、日本では9300Kが基本なのでどうしても見え方が違ってくるのです。そこはやはり日本仕様にしていかないと、いかにアメリカといえどもそのまま持ってきたのでは通用しないところでしょう。実際にCO3のカラリストにその違いを聞いてみると、「日本は青いね!」という応えが返ってきますね。

以前からユニバーサル化を進めてきたデジタル・ガーデンだが、企業カラーとして常に海外を意識している点は他のポストプロダクションとは大きく違うところかもしれない。これまでもイギリス、ドイツをはじめ、アジアでは中国などから発注依頼を請けるなど、海外企業との連携や協力を意識したスタッフへの教育も積極的に行っている。

野田氏:社内では希望者を募って定期的に英語の語学研修を行っています。その影響もあり、全く話せなかったスタッフも日常会話では苦労しない程度になるなど、英語を話せるスタッフの割合も次第に多くなっています。

東京のイメージカラーは….???

CGE13_vol05_04.jpg

デジタル・ガーデンには現在、CO3から派遣されたカラリストとして、2人目となるRAJIV BEDI(ラジーヴ・ベディ)氏が来日し常駐している。日本での生活2ヶ月目を迎えた彼に日本でのカラリスト・ライフ(?)を聞いてみた。

――日本で2ヶ月を過ごしてみての感想と、日本とアメリカの違いは?

ラジーヴ氏:僕は、東京はもちろん、日本は今回初めて来たのですが、ここは出会う人々にも仕事でも、毎日がとても素晴らしい経験になっていて満足しています。グレーディングの仕事を通じて、アメリカと日本の違いとしてまず感じたのは、アメリカのクライアントの場合は、監督やDP、代理店の人など多くの人がカラーグレーディングに関わってきますが、撮影段階で選択したカメラや照明などのセッティング時点で、すでに「こういう色にしたい!」という明確なイメージがあるのです。その中で我々カラリストの仕事は、その要望に対して、さらにレベルの高いものに仕上げることが求められます。日本のクライアントの場合、監督やDPのそうした意見というよりも、私のいくつかのカラーのバージョンを見たい、見せてほしいという要望が多いです。やはり私がCO3のカラリスト!という看板を背負って来ているので、クライアントもそこを期待して来られるからかもしれませんが!(笑)

――9300Kと6500Kの色温度の違いに戸惑いはありましたか?

ラジーヴ氏:たしかに大きく違いますね。最初は目が慣れないなど戸惑いは確かにありました。でも日本のテレビ基準である9300Kはどれも映像が明るくてクールな感じですね。テレビで見ていても、その分とてもカラフルで鮮やかに見えます。それに対してアメリカのテレビ基準である6500Kは暗いので、色も9300Kほどカラフルには見えません。その違いによって見せ方のスタイルも日本とアメリカでは大きく違っているのではないでしょうか。

ラジーヴ氏が、いま使用しているのはDaVinci Resolveで、他のカラーコレクションシステムの経験もあるが、CO3のロサンゼルス本社では全てのシステムでDaVinci Resolveを採用しているという。またリモート・テレシネを行う際にも、互いにDaVinci Resolveで揃えていたほうが生産効率という点においても有利だ。

――DaVinci Resolveについては?

ラジーヴ氏:一概にDaVinci Resolveの良い点、悪い点というのを表すのは難しいのですが、良い点で言えば、僕の仕事はクライアントを喜ばせることなので、自分がこれまで携わってきた仕事の中ではDaVinciを使ってそれが出来なかった、もしくは結果が嫌だったということは一度もなく、すべてポジティブな反応だったことです。

――カラリストとして、必要なこと、いつも心がけていることは?

ラジーヴ氏:睡眠!まずは寝ることかな!(笑)いつも心がけていることとしては、クライアントは「カッコ良くしてほしい」とか、「普通にしてほしい」という曖昧な表現で色の要望を出してくることが多いので、それがどういう基準でイメージしているのかを常に自分が街に出て、何がカッコ良いのか? 何が普通なのか? を判断できるように観察しておくことですね。

国柄の違い、色温度など規定の違いなどを考えると、ベストカラーというのはその国、その会社、その個人によって様々で統一する事は不可能だが、カラリストという仕事に対する意識や考え方は多く共有できるところはありそうだ。

最後に、ロサンゼルス、ムンバイなどいろいろな街で仕事をしてきたラジーヴ氏がカラリストとして感じる「東京」をカラーで例えると何色というイメージか聞いてみた。

ラジーヴ氏:渋谷や銀座を歩いてみて、東京は建物も精錬されているし、人々もとてもファッショナブルだ。何か一色で例えるとしたら…様々な見方があってとても難しいけど…僕が感じる東京のイメージ色は、イエローかな(笑)


Vol.04 [CineGear 2013] Vol.06

[ Category : ]
[ DATE : 2013-06-26 ]
[ TAG : ]

この記事に関連する記事一覧

[CES2020]Vol.09 「次の10年のエンターテインメント・プラットフォーム」とは?〜モバイル向け動画配信サービスQuibiスタート直前

txt:加藤薫(博報堂DYメディアパートナーズ) 構成:編集部 モバイル向けストリーミングサービス「Quibi」とは? 生活を変えるテクノロジーのショーケースとして... 続きを読む

[CES2020]Vol.08 日常が“つながる”と意外なものがメディアになる?未来の生活を彩るものたち

txt:平野陽子 (大広) 構成:編集部 2020年1月7日~1月10日、米国ラスベガスにて「CES 2020」が開催された。すでに多くのメディアで語られているが、再度振り返... 続きを読む

[CES2020]Vol.07 人工人間、身体性が問われるテクノロジー「NEONプロジェクト」

txt:西村真里子 構成:編集部 CES 2020で注目のテクノロジー「NEON」とは CES 2020の日本のスタートアップが出展するEureka Parkに... 続きを読む

[CES2020]Vol.06 目の付け所がAIなプロダクトが続々登場〜会場から見えてくるAIプロダクト達

txt:江口靖二 構成:編集部 進化する画像センサーがより良い未来を作る サムスンの「Ballie」は目の付け所がサムスンなプロダクトだ。百聞は一見にしかず、サムス... 続きを読む

[CES2020]Vol.05 航空会社として初基調講演。デルタ航空が考えるイノベーション〜パラレル リアリティ ディスプレイ

txt:江口靖二 構成:編集部 航空会社として初めての基調講演 CESでのキーノートには、例年家電メーカーであったり、インテルやクアルコムのようなチップ系のメーカー、最近では自... 続きを読む

[CES2020]Vol.04 より多くの人を集めるために〜CESにおける「見せ方」と「ブランディング」効果とは?

Audiのブースは上からキラキラしたリボンが無数に装飾されており、否が応でも足を踏み入れたくなる txt:清水幹太 構成:編集部 来場者の気を引く“見せ方”は多種多様 ... 続きを読む

[CES2020]Vol.03 一般化を迎えたカテゴリーに花開く、味わい深いプロダクトたち〜展示会スタート

txt:清水幹太 / 編集部 構成:編集部 いよいよ展示会が始まる MediaDayが終わり、CES展示会場での展示がいよいよ始まった。CESの他の展示会と大きく違う点... 続きを読む

[CES2020]Vol.02 TOYOTA、メルセデス・ベンツ、Sony~それぞれの「その次」の示し方~ MediaDay02

txt:西村真里子・猪蔵・編集部 構成:編集部 各社が次に問うモビリティとは? CESには世界160カ国から6,000人以上のメディア関係者が集まる。そのメディア関係者... 続きを読む

[CES2020]Vol.01 データの時代へようこそ!テック・トレンド〜IoTは知性化し、ストリーミング・AR/VRマーケットは拡大する〜 MediaDay01

txt:西村真里子・編集部 構成:編集部 CES2020開催直前2020年のテックトレンドを追う CES 2020がいよいよ始まる。今年も17万人強が世界160カ国以上... 続きを読む

特集記事

CES2020 CES2020
米国ラスベガスで開催された世界最大の国際家電見本市 CES2020をレポート。
PRONEWS AWARD 2019 PRONEWS AWARD 2019
2019年は映像業界にとってどんな年だったのだろうか。PRONEWS AWARDで部門ごとに振り返る。
Inter BEE 2019 Inter BEE 2019
千葉幕張メッセにて開催される国際放送機器展“Inter BEE“をレポート。
InterBEE 2019の歩き方 InterBEE 2019の歩き方
今年もInterBEEの歩き方をジャンル別にピックアップし、6種類のコースを紹介。
Film Shooting Rhapsody Film Shooting Rhapsody
フィルム撮影の経験をしたい人に向けてフィルム撮影で必要な各種の工程について解説していく。
IBC2019 IBC2019
欧州最大の業務用映像・音響の専門展示会「IBC2019」をレポート。
新世紀シネマレンズ漂流 新世紀シネマレンズ漂流
シネマレンズを中心に一眼やミラーレスデジタルカメラの動画撮影機能と組み合わせて使われる交換レンズの最新動向を紹介する。
BIRTV2019 BIRTV2019
中国・北京の中国国際展覧中心で開催された展示会「BIRTV 2019」をレポート。
SIGGRAPH2019 SIGGRAPH2019
世界最大のコンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術に関する学会・展示会SIGGRAPH2019をレポート。
QBEE2019 QBEE2019
九州放送機器展(QBEE)をいつもの会場練り歩き方式でレポート。
4K・8K映像技術展Report 4K・8K映像技術展Report
東京ビッグサイト青海展示棟にて開催された4K・8K映像技術などの最新技術が一堂に出展する「通信・放送Week2019」をレポート。
DSJ2019 DSJ2019
幕張メッセで開催された国内最大のデジタルサイネージの展示会「DSJ2019」をレポート。
Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019 Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019
米国ハリウッドのパラマウントスタジオ内で開催された映画撮影機材の専門展示会「Cine Gear Expo」をレポート。
After Beat NAB SHOW 2019 After Beat NAB SHOW 2019
東京・秋葉原のUDXにて開催されたAfter NAB Show 2019をレポート。
NAB2019 NAB2019
米国ネバダ州ラスベガスにて開催される世界最大の放送機器展覧会「NAB2019」をレポート。

トップ > 特集 > [CineGear 2013]Vol.05 世界でつながるプロダクションシステム~Company 3 / デジタル・ガーデン:カラーコレクションの明日~