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[CES2018]Vol.06 制作・開発者目線から見たCES2018〜なぜ僕らはCESに足を向けるのか?

2018-01-18 掲載

txt:清水幹太 編集部 /  構成:編集部

見方によって景色は大きく変わる

これを書いている筆者は、普段はテクニカルディレクター及び開発者として様々な制作・開発プロジェクトの現場で働いている。実際問題昨年のCESには出展者スタッフとして参加した、どちらかというと作り手側の人間である。

CESの展示物は本当に多様だ。大企業の新製品から、スタートアップのベンチャープロダクトから中国の企業を中心とした電子部品の展示に至るまで、見るものの選択肢はあまりに多い。ゆえに、どういった目線で展示を見て回るかによって、見えてくる景色も大きく変わってくる。

革新的なプロダクトやサービスを見つける、という目線だとあまりに地味な展示物も、制作・開発者目線から見ると実は自分たちのものづくりに利用できる可能性がある素晴らしいプロジェクトであったりすることがある。

たとえば、私の場合、いろんなブースを見て回る際、パッと見普通のプロダクトであっても、「これは何かの仕事に使える可能性がある」と思ったら必ずある質問を投げかけることにしている。「SDKは提供していますか?」という質問である。SDKとは、「Software Development Kit」の略。つまり、そのプロダクト用の「ソフトウェア開発キット」である。これがあるか、という質問はたとえばそのまま、「この製品は、専用アプリ以外の、誰かが別につくったアプリやウェブサイトその他から操作したり情報を得たりすることはできますか?」ということになる。

生産中止となったXBOX用の身体検知デバイス=深度センサーカメラであるMicrosoft Kinectは、インタラクティブコンテンツの開発者の間ではXBOXの付属デバイスというよりも、安価で強力な深度・身体検知デバイスとしてあまりに有名だ。Kinectは、人の動きを検知するデジタルインスタレーションから、3Dスキャンに至るまで、様々な用途で様々な局面で大活躍してきたし、今なお多くの場所で稼働している。世の中的にはXBOXの付属品であっても、開発者コミュニティの中では超スタンダード化している大ヒット商品、ということになる。

これもすべて、Microsoftがこういった利用のされ方を良しとして、KinectのSDKを積極的に公開したからだ。SDKがあるのとないのと=いじれるのといじれないのと、では開発者にとっては雲泥の差なのだ。

flicは、汎用性の高いボタンデバイスだ。単なる小さなボタンではあるが、IFTTTなどを通して、様々なサービスやIoTと接続して機能を割り当てることができる。たとえば、このボタンを押すと、電球がつく、というようなことはもちろん、ボタンを押すとピザが届く、なんていうこともできる。それだけならよくあるボタンデバイスではあるのだが、このflicは、ボタンデバイスと自作のiOSやAndroidのアプリとの連携を簡単に組み込むことができるSDKを公開している。

IFTTTと連動しているようなサービスだけではなく、自分でつくったアプリの機能とflicを連動させることもできる、ということは、たとえば自分で開発したカメラアプリのシャッターボタンとして利用したり、flicを持っているユーザーにそういうオプション機能を使ってもらうこともできるということだ。flicの場合、iOS/Androidといったスマートフォン開発者向けにしぼったSDKを提供し、導入しやすくしているのが特徴だ。この「いじりやすさ」はこういったプロダクトの大きな強みとなる。

もう1つ、SDKを提供している興味深いプロダクトを紹介する。

flowは、空気の汚染度を解析してアプリ等で表示することができるデバイスだ。単純に便利なものではありつつ、このプロダクトの強みは、プロダクトを起点とした広がりの部分にある。この製品を提供しているPlume Labsは、世界中のflowで取得した空気の情報をデータベース化して、誰でもアクセスして利用できるようにしたAPIを提供している。

こういった、空気の状態を解析するようなIoTはいくつか展示されており、つまりすごく強いアイデア・プロダクトとは言えないのだが、大事なのは、このプロダクトがAPI(SDK)を公開しているということだ。たとえば、このAPIを使うと、出かける場所を指定して、汚染度が高そうな場合はマスクの着用を促す、みたいなシンプルな自前アプリを簡単につくることができる。

製品の機能をオープンにして、様々な形で使えるようにすることで、より多くの用途に使ってもらえたり、より多くのデータを収集できる。今年のCESは、そういう形でSDKの提供を行っているプロジェクトが多くなっていたように感じられた。ただのIoTやサービスではなく、今後はこういった形で開発者を含めたエコシステムと製品を接続することがスタンダードになっていくはずだ。

こういった開発者向けに開かれたものだけではなく、そもそもつくり手を支援する用途でつくられているプロダクト/サービスも展示されている。

YoloLIVは、通常、ウェブカメラとして利用する場合に、いろいろな機材やテクニックが必要になる一眼レフカメラやGoProといったカメラデバイスを、接続するだけでウェブカメラとして利用でき、デバイス上でテロップを入れたり、エフェクトを入れたりをしながら、PCを介さず直接YouTube LIVEやFacebook Liveにライブ中継を行うことができるプロダクトだ。

プロダクトにはWi-Fiはもちろん、SIMカードのスロットがついており、いつでもどこでも、PCを持っていきづらいような場所であっても、一眼レフのカメラ等を使ったハイクオリティな動画配信が可能になる。

これはつくり手にとってはとても便利なプロダクトだ。遠隔地や特殊な場所でライブ中継をしなければいけないような場合に、YoloLIVを導入すれば、考えなければいけないことが減って工数も減る。WebRTCなどでの動画配信に対応していないのが惜しいところだが、画質もとてもクリアで、何よりユーザーインターフェースがシンプルで使いやすい。

開発者目線で展示を見るということは、展示している人たちは自分たちのライバルである、ということでもある。中には開発者として「やられた!」というような展示もある。

HauoliのMobil-Trakkは、まさに「やられた!」感のある仕組みだった。複数のスピーカーから人間には聴こえない音波を発信。それをスマートフォンが検知して、スピーカーからの距離と位置を解析、スマートフォンの場所を算出する。つまり、この仕組を使うと、スマートフォンをたとえばWiiリモコンのように、位置をトラッキングするコントローラとして利用することができる。スマートフォンだけで画面上の場所をポインティングすることができる。CESの会場ではシューティングゲームを使ったデモが行われていた。スマートフォンを動かすと、画面上の敵を正確にポイントして、倒すことができる。

重要なのは、これが市販のいかなるスピーカーを使っても動作するということ、つまり、特殊な専用デバイスを使う必要がないということだ。スマホとスピーカー、既に家の中にあるものを使って非常に簡単に導入できる画面ポインティングシステム、ということになる。

技術的にできるということは想像していても、実際にこういった形で実装され高い精度でデモをされると、同じ開発者としてはまさに、良い意味で悔しい思いをすることができるし、こういうシステムが必要な仕事が発生したときに、パートナーとして検討することもできる。

というように、通常、こういったメディアではアイデアが強くて見た目が派手なものが紙面を飾りがちなので、制作・開発者にとってのCESは「いろいろな企業のアウトプットの発表会」として見えてしまってきたかもしれない。

しかし、開発者の視点で見たときにも、CESは様々なアイデアを与えてくれるし、デジタルな制作・開発を行う上での視野を拡げてくれる宝の山だったりする。ここで紹介したプロダクトやサービスだけではなく、つくり手として引き出しに入れておくべき展示物はたくさんある。

日本の開発者も、もっとCESに行くべきだと思う。この催しは、単なるアイデアや新製品プレゼンテーションではなく、作り手のニーズにしっかり応えられる奥深さを持っているのだ。

txt:清水幹太 編集部 / 構成:編集部
Vol.05 [CES2018] Vol.07

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[ DATE : 2018-01-18 ]
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