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招待顧客を対象としたプライベートショー「ソニービジネスソリューション内見会」開催

■内見会の様子

ソニービジネスソリューション株式会社は、6月13日~14日の2日間、東京・品川の本社ビル大会議場にて招待顧客を対象としたプライベートショー「ソニービジネスソリューション内見会2019」を開催した。

今年はAIやクラウド、ITを活用したソリューションの展示が増えており、イベント名も「映像制作機器 新製品内見会」から「ソニービジネスソリューション内見会」に変更されていた。編集部が気になった出展をピックアップして紹介しよう。

今年も品川のソニー本社大会議場で行われた「ソニービジネスソリューション内見会」

ソニービジネスソリューション内見会の展示レイアウト。ブースの数などは、昨年から大きく変わっていないようだ

カムコーダーゾーンの注目はFS7とFS7 IIで快適なショルダー運用を実現するビルドキット

まずはカムコーダーゾーンの展示から紹介しよう。カムコーダーゾーンでの展示で目に止まったのは、NABで発表されたFS7とFS7 IIで快適なショルダー運用を実現するビルドキットだ。

■オーディオ&ワイヤレスユニット、ビューファー、ショルダーアダプターの3点セットで構成される「CBK-FS7BK」

ソニーのFS7シリーズといえば、今でも汎用Eマウントとスーパー35mm相当のセンサー搭載で拡張性の高さで人気のベストセラーモデルだ。しっかり担いで撮りたい人やショルダーカムコーダーで慣れている人は、拡張ユニット「XDCA-FS7」やライトウェイトロッドサポート「VCT-FS7」を組み合わせてショルダースタイルにして使う人も多かった。

本来の拡張ユニットのXDCA-FS7は、ProRes収録やGENLOCK、マルチカメラオペレーション対応となるためのものだ。しかし、担いで撮りたい人は Vマウントプレートを活用してバッテリーを搭載し、バランスをとるのを目的として使用されていた。

そんなショルダースタイルにこだわりたい人向けに作られたのがFS7とFS7 II向けENGスタイルをさらに快適に使えるキット「CBK-FS7BK」だ。

オーディオ&ワイヤレスユニット、ビューファー、ショルダーアダプター3点のCBK-FS7BKとLA-EB1で構成される

CBK-FS7BKは、オーディオ&ワイヤレスユニット、ビューファー、ショルダーアダプターの3点セットで構成される。もともとFS7に搭載されているビューファーは、触るとポジショニングが動いてしまったり、ショルダーカメラと同じようなポジショニングになかなかなり難い問題があった。CBK-FS7BKは、ショルダーと同等の形状をもったビューファーを搭載している。

ENGと同等のビューファーを搭載

ショルダーアダプターは、前後の可動範囲を広く、B4レンズを付けたときにも最適な重心バランスで担げるように設計されている。レンズサポートを搭載しており、B4レンズを下から支えることも可能。

オーディオユニットは、スロットインのワイヤレスレシーバーに対応している。ショルダースタイルでは、ワイヤレスを使うことが多く、その際にチューナーユニットをつける場所がない問題があった。ショルダーと同じようにスロットイン搭載を望む意見が多かった声を反映したわけだ。

また、Wi-FiやLTEドングル対応で、携帯の回線を経由して動画を飛ばすこともできる。オーディオユニットから電源をとることも可能で、本格的にショルダーに近い運用を可能にしている。

■B4マウントをEマウントに変換するE/B4マウントアダプター「LA-EB1」

E/B4マウントアダプター「LA-EB1」もリリースされる。B4マウントをEマウントに変換するアダプターは、ほぼ世の中にはないのだが、そんな変換を実現するアダプターだ。

LA-EB1は、B4のイメージサークルをおおよそスーパー16ぐらいまで拡大光学系で大きくする仕組みを搭載している。なぜスーパー35まで大きくしないのかと思われるが、ブースにいたスタッフの方いわく「B4の小さいイメージサークルをスーパー35まで拡大すると2絞り半ぐらい暗くなってしまう」とのこと。拡大率を抑えることで0.6ストップぐらいの感度低下に防いでいるという。

LA-EB1は、4K収録には未対応。中央部のHDエリアだけをスキャニングする「センタースキャン」のモードに切り替えてHD撮影となる。

ソニー初のNDIサポート対応旋回型4Kカラービデオカメラ「BRC-X4000」

左が参考出展の旋回型4Kカラービデオカメラ「BRC-X4000」

旋回型4Kカラービデオカメラ「BRC-X4000」もNABで発表された新製品だ。発売時期や価格はまだ未確定で、参考出展として展示されていた。

BRC-X4000の発表で話題になっているのが、ソニー初のNDIサポートだ。「ソニーもいよいよNDIをやるのか?」と話題になっている。NDIを使えば、スイッチャーとLANケーブルだけで映像を送ることが可能になる。しかし、ソニーにはNDIにサポートしているスイッチャーをリリースしていないため、NDIの環境下ではNewTek社のTriCasterなとど組み合わせて使われるだろう。

リモートコントローラーとリモートコントロールパネル対応で、オペレーターとVEのような感じで対応できる

ブースでは、アクセサリーと組み合わせた操作性を紹介。カメラの制御はVISCA対応で、旋回型カメラ用の高機能リモートコントローラー「RM-IP500」だけでなく、制作カメラ用のリモートコントロールパネル「RCP-1501」からアイリスやゲインなどを動かすことが可能。カメラ操作とアイリスなどのカメラ調整を別々に行いたいという要望にも対応できることがブースで紹介されていた。

大幅に転送速度が向上したSxS Pro XカードとSxS Pro Xカードリーダーを展示

カムコーダーゾーンのメディアのコーナーでは、今年9月に240GBと120GBの2モデルを発売予定のSxS PRO Xが展示されていた。SxS PRO+からSxS PRO Xにモデルチェンジとなり、併売は行われない。専用のリーダー・ライターを同時に発売して、Thunderbolt 3のみの接続になる。

特徴は読み出し時の最大転送速度は10Gbpsで1250MB/sを出すことが可能なところだ。NANDフラッシュが新しくなり、転送速度はこれまでの3倍を実現。データの書き出しの部分で、相当な待ち時間の短縮を実現できそうだ。

SxS Pro XカードとThunderbolt 3に対応したSxS Pro Xカードリーダーを展示

メディアに記載されている10Gbpsの文字に注目

もう1つ展示されていたのは、納品に用途を絞ったSxSの搬入モデル「SBS-240H」。240GBの単一モデルでの発売となる。搬入用メディアのために、カムコーダーでの使用はできない。4K XAVCレコーダー「PZW-4000」専用メディアで、こちらのデッキから書き出される完パケなどの納品用素材収納に限定したSxSとなっている。

SBS-240Hの特徴は、お手頃な価格を実現しているところだ。市場推定価格は6万円前後で、カムコーダーに対応しない分、SxS PRO+の256GBと比較して、約1/3の価格となっている。

PZW-4000専用のメディアとなる240GBのSxSメモリーカード「SBS-240H」

小型で周波数を簡単・素早く設定可能にした新ワイヤレスマイクロホンシステムを展示

オーディオゾーンでは、こちらもNABで話題になっていたワイヤレスマイクロホンシステムUWP-Dシリーズの新製品が展示されていた。

左が現行機、右が後継機。サイズが小型化されている

2014年に発売した送信機と受信機がセットのワイヤレスマイクロホンパッケージ「UWP-D11」の後継機となる「UWP-D21」を展示していた。後継機は「小さくなった」というのが第一印象だ。現行機と後継機の送信機のサイズを比較を比較してみたが、やっぱり一回り小型化されている。

現行機は表示部分が液晶モニターだったが、後継機は有機ELを採用し、視認性が向上している

上が後継機、下が現行機。長さが縮まってコンパクトになっている

後継機の大きな特徴は、周波数の設定を簡単にし、取材の現場ですぐに撮影に取り掛かれる仕組みを実現しているところだ。現行機はメニューの中に入って周波数を設定していたが、後継機は「NFC SYNC」と呼ばれるボタンを搭載し、このボタンを押すだけで今いる空間で使える周波数を割り当ててくれる。さらに、割り当てられた周波数は送信機のほうにNマークとNマークを重ねるようにタッチすると、送信機に設定される仕組みになっている。

スタッフによると、今まで20~30秒程度かかっていた面倒な設定が、7秒ぐらいで簡単に行えるという。これまで以上に短時間で取材に取り掛かることができそうだ。

使える周波数を受信機を割り当ててくれる「NFC SYNC」ボタンを搭載

受信機と送信機を重ねるだけで、送信機に設定可能。設定の受け取り完了は振動で教えてくれる

難しい設定は不要、省人化、省力化を実現するAIソリューションに注目

■AI映像解析テクノロジーでクリエイティブな映像コンテンツ作りが自動にできる「Edge Analytics Appliance」

クロマキーレスCGオーバーレイの様子。従来は専用のブルーバックスタジオや経験のあるスタッフが必要だった合成映像コンテンツの撮影を、手軽に実施できる

今年の内見会が例年と違うところは、映像系に関するAIを使った新規ソリューションの展示が充実しているところだ。その中でも展示会場でひときわ注目を浴びていたのが、映像制作支援ユニット「Edge Analytics Appliance」だ。ハードウェアを使って色々な機能の実現が可能で、映像コンテンツを生成できる商品になっている。その中から、「クロマキーレスCGオーバーレイ」と「板書抽出オーバーレイ」のデモが行われていた。

板書抽出オーバーレイの様子。ホワイトボードや黒板などに書かれた文字や図形をリアルタイムに判別・抽出し、登壇者の前面に浮き上がらせる

Edge Analytics Applianceには箱型の本体が存在し、本体には2つのHDMI入出力端子を搭載している。カメラの映像を1番に入力し、背景の素材を2番に入力すると、本体の中では映像の中から人を認識してその領域だけを切り出し、2番の映像と合成する。その映像をコンテンツをリアルタイムに一番から出力される。

設定は、静止した背景を覚えさせることだけだ。これまで、グリーンバックを使った撮影は、複雑な照明環境のセッティングやカメラの位置に応じた設定が必要だったが、Edge Analytics Applianceには、そのようなセッティングを必要としない。ケーブル1本を箱につなぐだけで、簡単にコンテンツを作れる商品になっている。

Analytics Applianceの驚くところは、まるでマジックショーを見ているという表現が似合うほど、画像解析AI技術を使って映像から動体だけ抜けるところだ。例えばカメラの前に立っている女性が手に持っているTシャツを上に投げると、投げ上げられたTシャツは正確に切り抜かれて映像に反映される。この様子には、誰もが驚くだろう。

ターゲットは、ネット配信のコンテンツやローバジェットのメディア制作で、価格はオープン価格。市場想定価格は本体が40万円前後。クロマキーレスCGオーバーレイのライセンス価格は110万円前後とのこと。

Edge Analytics Applianceはハードウェア本体で可動し必要なアプリケーションを本体にインストールして利用できる

本体背面には、HDMI入力を2つ、HDMI出力を2つ搭載している

■広く撮った4K映像から自然な画角で切り出して対談番組を一人で実現できる「自動切り出しソリューション」

「自動切り出しソリューション」のデモ映像。左側の映像が4Kカメラに1台で広めに撮った映像で、右側が2Kの画像を切り出して送出しているところ

AI自動化ソリューションのコーナーでは、「自動切り出しソリューション」が展示されていた。4Kカメラに1台で広めに撮った映像から、2Kの画像を切り出して送出するというソリューションだ。もともとソニーの一部のシステムには、4KからHDに切り出す機能はあったが、どこのエリアをどれぐれぐらいの大きさで切り出すのか?というところは全部マニュアルで操作していた。自動切り出しソリューションは、切り出し範囲をより自然な画角で切り出すところを自動化している。

顔認識機能を搭載しており、メインに写したい人を設定すると、その人だけが映るようになる。2人が映るように設定も可能。特に、自然な画角を自動に選ぶところがポイントになっている。

テレビ局でこれまで対談番組を制作する場合は、カメラを2台使ってカメラマン2人でおっかけていくというのが必要になっていた。自動切り出しソリューションを使えば、1台のカメラで広く撮っておいて、あとは小さい画像を切り出す。一個の固定カメラだけを置いておけば、あとはオペレーターひとりだけで動かせるようなイメージで実現する。

自動切り出しソリューションにより、これまで3人で行っていた作業を一人でできるようになる。より省力化、省人化で、番組制作が実現できそうだ。

■どこでもだれでも簡単に音入作業ができるAIアナウンサー

テキストベースで原稿を人間に近い発話でしゃべることができるAIアナウンサーのサービス。ブラウザ上で駆動するので、いつどこにいても音入れの作業ができる

AIアナウンサーも見逃せない展示だった。設定したテキストベースの原稿を女性の声で読み上げるシステムで、サービスはフリーのAIアナウンサーという位置づけで提供されている。実際に喋りを聞いてみると、想像以上にきれいな発音で実際の人が喋っている品質に近かった。

約10万件の実際に読み上げた原稿を学習済みで、イントネーションやアクセントを滑らかに喋るのを特徴としている。例えば、大阪の日本橋と東京の日本橋は、同じ日本橋という単語だが、AIアナウンサーが読み上げる際には、日本橋の前後に大阪がはいっていれば「にっぽんばし」と話し、東京と入っていれば、「にほんばし」と話す。

AIアナウンサーは、ブラウザ上で動作しており、いつどこにいても音入れの作業が可能。すでに高知県を放送エリアとする高知さんさんテレビには導入されており、イベント情報のお知らせなどで使われているという。

深夜帯で流さなければいけない情報にアナウンサーを使うとなると、スケジュール調整などに時間がかかってしまう。そんなときにAIアナウンサーを使えば、パソコンとIDとパスワードだけあれば、どこでもだれでも簡単に音入作業が可能。このような用途に重宝できるのではとのことだ。

txt・構成:編集部


Vol.03 [After Beat NAB2019] Vol.01