txt:岡英史 構成:編集部

Vintenからの回答

100mmボール採用でショルダーカメラでもしっかりホールドできるようになった

Vol.75でFlowtech75のレポートをした時にも、このシステムには非常に満足したのだが、やはり大きいカメラを載せてみたいという欲求と、その場合の不満点をメーカーにその後進言していた。

IBC2018でそれらを全て組み入れた新型の三脚が展示されていたが、今回いち早くそのデモ機をお借りすることが出来た。丁度同じタイミングでJVC GY-HC900もお借りしていたので、ヘッド部分はVision100と組み合わせて現場に持ち込んでみたが、ENGの三脚としてもはや欠点がほぼない素晴らしい脚となっていた。

近年Vintenは全て手放してしまったのだが、今回の組み合わせを使ってみると改めてVisionシリーズの良さを実感した。では詳しくFlowtech75との違いを見ていこう。

最長から最短迄がワンマンでも簡単に出来る。しかもカーボンモノコックの脚は今回の組み合わせだと最長でも剛性の弱さは感じられない

Flowtechシリーズはスプレッダー無しでも運用できるところ。その場合、最短で約30cm程度、正にハイハット要らずだ

エボリューション(正常進化)

グランドスプレッダーの伸縮はストッパーでワンタッチでできる。ラチェット機構付きなので長さを簡単に揃える事が出来る

今回のデモ機では、Flowtech75の時にENGで使用するには最大の不満点だったグランドスプレッダーが試用版として付属してきた。ミッドスプレッダーだと脚の伸縮時に接地面が変わるので、ワンマンで素早く調整というのが難しいが、グランドスプレッダーだと接地面は常に同じ広さなのでFlowtechシリーズ最大の特徴であるワンレバー調整がバッチリと合う。特にごちゃごちゃした現場でのENGにはこれでないと厳しいのはショルダーを担いでる方にはよくわかる事だろう。

足でストッパーを踏めば手を伸ばすことなく伸縮が出来る。これもモノコック構造だからだ

Flowtech75の時にManfrotto製の汎用グランドスプレッダーを付けて試したのだが、Flowtechシリーズのモノコック脚はその隙間が少なく、このシリーズにはグランドスプレッダーは無しなのかも?と思っていたが、流石に自社でカーボンを作っているだけはあり、その少ない隙間に綺麗に沿うように収納可能な物が出来ていた。見かけはやや細身のスプレッダーなので剛性は?と思ったが、ひっくり返してビックリしたのはスプレッダーもモノコック仕様になっていた事だ。これなら異物の混入もなく剛性も問題ない。

写真左:表、写真右:裏。モノコック構造がよくわかる

ENGだとグランドスプレッダーを付けてのワークが基本になるが、一番短くしても更にアンダーにセットしたい時はグランドスプレッダーを最も伸ばせば脚の角度が広がる分さらに下がるが、Flowtech100はスプレッダー無しでもストッパーがあるので、さらに下げる事が出来る。その時にスプレッダーを外すが、今までの三脚だと石突のせいで取り外しがやや面倒だったのが、Flowtech100のスプレッダーはここもワンタッチで取り外しが出来るようになってる。この機構は考えれば当たり前なのだが、採用したのはFlowtech100が多分最初だと思う。

ここまでワンタッチ、取り外しても石突は外に出ない

野外でしっかり固定する際に石突を使う時もフットパットはてこの原理を使って簡単に外すことが出来る

グランドスプレッダーだけが新しいかといえばミッドスプレッダーも新しくなっている。これも同じくカーボンモノコック製だ。上のダイヤルを回すことによりスプレッダーの角度を簡単に変える事が出来るので、脚の開脚度を素早く変更できる。更にアーム部分の伸縮も可能なので、その自由度は大きい。地面が平坦ではない場所ではミッドスプレッダーは非常に有効で、階段や斜度のある所ではグランドスプレッダーより確実に使いやすい。もちろん取り外しはワンタッチで出来る。

ダイヤルでの開脚度+アームの伸縮で様々な地形に対応可能なミッドスプレッダー

総評

Flowtech100+Vision100の組合せは、まさにENG現場においてパーフェクトと呼ぶに相応しい。さすがVintenというしかない程だ。余り褒めちぎっても「嘘くさい」と御叱りを貰うのでやや厳しい目で見ると、ワンレバーでの上下の為、3段足をどの高さで固定するのか?というのはモノコック機構のため正直難しい。

また、脚に自由アームを付けてモニター等を固定したい時にやはりモノコック機構のため、挟む場所が無い。そもそもこの様な新ギミックのモノコック脚はVinten等の大メーカーではなくインデペンデント的なメーカーが作るべき物だとも思う。

ボール部分に3/8inchネジが切ってある

そして前記した欠点だが、これも実は既に回答が出ている。今までのパイプ脚ではそのトラス的な組み合わせで剛性感を出したが、これはカーボンモノコック製なのでその心配はない。また自由アーム等はそれを付けるべき3/8inchのネジ穴が切ってある。つまり筆者が使って環境では何の欠点も見つからなかったのが最大の欠点かもしれない。

Flowtech75同様、マグネットを使用してのロックは楽に移動がしやすい

WRITER PROFILE

岡英史

岡英史

モータースポーツを経てビデオグラファーへと転身。ミドルレンジをキーワードに舞台撮影及びVP製作、最近ではLIVE収録やフォトグラファーの顔も持つ。