PRONEWS

  • imgABOUT
  • imgTWI
  • imgFB
  • imgYTU

トップ > 特集 > [IBC2019]Vol.05 メディアとエンタメにおけるブロックチェーン利用状況の進展が少ない訳とは?

News

[IBC2019]Vol.05 メディアとエンタメにおけるブロックチェーン利用状況の進展が少ない訳とは?

2019-10-07 掲載

txt:江口靖二 構成:編集部

可能性未知数のブロックチェーン

IBC2019では、ブロックチェーンに関するセミナーが3本開催された。2018年は6本だったので、数で見ると半減している。数だけで判断するのは適切ではないがあまり活況という状況ではない。

IBCの中で常に新しい領域を中心に取り上げるFuture Zoneの基調講演として、Tech Mahindra社のBlockchain Practice LeaderのRajesh Dhuddu氏が登壇した。同社はインドのコングロマリットであるMahindraグループの情報、通信、テクノロジー分野におけるデジタルソリューションのサービス会社で、年間売上高71億ドルのグローバルな複合企業体である。日本からはなかなか見えにくいが、グローバルで見た場合の事業スケールと影響力は極めて大きいといえる。

Tech Mahindra社のBlockchain Practice LeaderのRajesh Dhuddu氏

基調講演のタイトルは「Blockchain Incubating M&E Future」(M&EはMedia & Entertainment)である。

基調講演は最初に、「ググるというのは必ずしもグーグルで検索をするということではないのと同じように、ビットコインだけがブロックチェーンというわけではない」という、未だに誤解されやすい部分の指摘から始まった。さらに、ブロックチェーンのフェーズは三段階あって、最初がビットコイン、次がそれ以外も含めた仮想通貨で、それらは比較的大げさに語られたが、今後はエンタープライズブロックチェーンが主流になるとした。エンタープライズ領域とは、マイクロ課金が可能な分散型CDN、コンテンツトラッキング、そして契約の管理を示す。

「ビットコインだけがブロックチェーンではない」

メディアとエンターテインメント領域におけるブロックチェーンでは、コンテンツ保護とロイヤリティの支払い、P2Pによるコンテンツのセキュアな配布と収益化、クラウドファンディング、コンテンツのキュレーションといった、制作から配信までの各フェーズにおいて様々な使われ方ができることを示した。

ブロックチェーンの進化 非常に活発に実装されていく領域 メディアとエンターテインメントにおけるブロックチェーンとは何か

しかしながら様々な課題や、誤解も同時に存在している。これらを解決するたためには、自らがブロックチェーンを活用する、利用することであると指摘した。

自らブロックチェーンを実装すること ブロックチェーンが実装可能な領域1 ブロックチェーンが実装可能な領域2 ブロックチェーンによって複数の複雑な既存システムを統合する必要はなくなる

基調講演でのこうした指摘は、概念としては理解できるのだが、具体的なメリットや、ブロックチェーンを利用することによってはじめて実現できる、あるいは効率的に実現できるわかりやすいサービス、といういうものが見えてきていない。トークンに代表されるような機能によって、制作から利用までのフェーズでメリットが享受される構造といものが、フェーズ単位で分断されている状況では、大きくブレイクはしにくいような印象がある。

例え話だが、Netflixが全面的にブロックチェーンを利用するようなことでも起きればわかりやすいのだが、そもそもそういうことではないし、仮にそういう意味合いのことが起きたとしても、それでは中央集権型のビジネスになるので、本来の各フェーズにいるプレイヤーやユーザーにとってはブロックチェーンがもたらす価値観や世界観とは矛盾する話になってしまう。

たとえばソニーミュージックが「soundomain」で目指していることは、アーチスト側、あるいはユーザー側それぞれの個人にデータが紐付くことで、音楽の権利情報を細分化して管理して、クリエイターとユーザーの間で合理的な価値の分配が可能になることが期待されている。この場合もやはりいままで「中央」にいたソニーミュージックの役割そのものが問われる事になり、場合によっては自己否定になるので話はそう単純ではない。

IBC2018から2019までの1年間で、メディアとエンターテインメントにおけるブロックチェーンは、じわじわとしたゆっくりとした動きだったと言えよう。ブロックチェーンが業界構造や社会構造を変えることができるだけの原動力や推進力がこれから持てるかどうか、可能性はあるがそこはまだまだ未知数のままである。

txt:江口靖二 構成:編集部
Vol.04 [IBC2019] Vol.06

[ Category : , ]
[ DATE : 2019-10-07 ]
[ TAG : ]

この記事に関連する記事一覧

[IBC2019]Vol.08 聞こえてくる脱地上波への足音、OTTへのさらなる進展

txt:石川幸宏・編集部 構成:編集部 OTT普及による映像業界への影響 IBCがいま最も先端の映像事情を垣間見れる展示会であることは本特集Vol.01でも言及... 続きを読む

[IBC2019]Vol.07 SIGMA fp発売直前、一台のカメラに二つのカメラが共存する!?山木社長と若松氏に聞く

シグマ代表取締役社長 山木和人氏(左)と、商品企画部の若松大久真氏(右)txt・構成:編集部 いよいよ発売直前。気になる時期と販売価格は? 7月に発表されたSIGMA ... 続きを読む

[IBC2019]Vol.06 メディアやエンターテインメント領域のAIと機械学習

txt:江口靖二 構成:編集部 カンファレンス、セッションからみる現状と近未来 IBC2019ではブロックチェーンと同様に、AIや機械学習(マシンラーニング、ML)... 続きを読む

[IBC2019]Vol.04 IP、リモートカメラが変える映像現場の未来

txt:石川幸宏・編集部 構成:編集部 急激に進むIP化の波 このIBCで特に目立ったのが、IPとリモートカメラによる各種制作ソリューションだ。特にライブイベント、リモ... 続きを読む

[IBC2019]Vol.03 今後の映像業界を牽引するのはGAFAではなく中国勢になる

txt:江口靖二 構成:編集部 今年注目のキーワードは“8K+AI” IBC2019での注目キーワードは「8K+AI」だ。そしてそれらのほとんどは中国企業によって先導さ... 続きを読む

[IBC2019]Vol.02 豊作の秋を感じる賑わう会場から〜カメラ、レンズなど注目の新製品と動向

txt:石川幸宏・編集部 構成:編集部 豊作の秋を感じさせる賑わう会場より この秋のIBC2019のタイミングでは、Vol.01で紹介したソニーのFX9、Z750をはじ... 続きを読む

[IBC2019]Vol.01 欧州放送展示会IBCに異変あり!今年の印象と目立つ新製品発表から

txt:石川幸宏・編集部 構成:編集部 今年のトレンドを探る 毎年9月にオランダ・アムステルダム市街地にある、RAI会場で開催される、欧州最大の業務用映像・音響... 続きを読む

[IBC2018]Vol.06 会場から気になるブースをピックアップPart3

txt:猿田守一・編集部 構成:編集部 AJA、IBC2018で8つの新製品と現行製品のアップデートを発表 AJAは、IBC2018にて8つの新製品と現行製品の... 続きを読む

[IBC2018]Vol.05 会場から気になるブースをピックアップPart2

txt:猿田守一 構成:編集部 Blackmagic Design Blackmagic Designは、昨年と変わらず大きなブースを構えソリューションを展示。中で... 続きを読む

特集記事

Inter BEE 2019 Inter BEE 2019
千葉幕張メッセにて開催される国際放送機器展“Inter BEE“をレポート。
InterBEE 2019の歩き方 InterBEE 2019の歩き方
今年もInterBEEの歩き方をジャンル別にピックアップし、6種類のコースを紹介。
Film Shooting Rhapsody Film Shooting Rhapsody
フィルム撮影の経験をしたい人に向けてフィルム撮影で必要な各種の工程について解説していく。
IBC2019 IBC2019
欧州最大の業務用映像・音響の専門展示会「IBC2019」をレポート。
新世紀シネマレンズ漂流 新世紀シネマレンズ漂流
シネマレンズを中心に一眼やミラーレスデジタルカメラの動画撮影機能と組み合わせて使われる交換レンズの最新動向を紹介する。
BIRTV2019 BIRTV2019
中国・北京の中国国際展覧中心で開催された展示会「BIRTV 2019」をレポート。
SIGGRAPH2019 SIGGRAPH2019
世界最大のコンピュータグラフィックスとインタラクティブ技術に関する学会・展示会SIGGRAPH2019をレポート。
QBEE2019 QBEE2019
九州放送機器展(QBEE)をいつもの会場練り歩き方式でレポート。
4K・8K映像技術展Report 4K・8K映像技術展Report
東京ビッグサイト青海展示棟にて開催された4K・8K映像技術などの最新技術が一堂に出展する「通信・放送Week2019」をレポート。
DSJ2019 DSJ2019
幕張メッセで開催された国内最大のデジタルサイネージの展示会「DSJ2019」をレポート。
Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019 Digital Cinema Bülow VIII~Cine Gear 2019
米国ハリウッドのパラマウントスタジオ内で開催された映画撮影機材の専門展示会「Cine Gear Expo」をレポート。
After Beat NAB SHOW 2019 After Beat NAB SHOW 2019
東京・秋葉原のUDXにて開催されたAfter NAB Show 2019をレポート。
NAB2019 NAB2019
米国ネバダ州ラスベガスにて開催される世界最大の放送機器展覧会「NAB2019」をレポート。
SXSW2019 SXSW2019
テキサス州オースティンで開催されたSXSW2019をレポート。
CP+2019 CP+2019
パシフィコ横浜にて開催されたカメラと写真の総合展示会「CP+2019」をレポート。

トップ > 特集 > [IBC2019]Vol.05 メディアとエンタメにおけるブロックチェーン利用状況の進展が少ない訳とは?